毎年10月に行われる湯の山温泉の僧兵まつり。
永禄年間に三嶽寺で勢力を誇っていた僧兵にちなんで、明治時代から僧兵姿が再現されています。
火の粉と水しぶきが夜空に舞う
漆黒の夜空に浮き立つ松明の紅。渓谷にこだまする僧兵太鼓。
天を紅く染める湯の山の壮大な火まつりは、湯の山温泉と僧兵の長い歴史を今に伝えます。
天台宗の三嶽寺が湯の山に建てられたのは、大同二年(807)と伝えられています。
その七百六十年あまりをへた永禄十一年(1568)織田信長の伊勢進攻によってこの三嶽寺も他の天台宗寺院と同じく焼き討ちにあいました。
そのときに勇敢に戦った僧兵たちの勇姿を、今に伝えるのがこの僧兵まつりです。
毎年十月に行われる僧兵まつりは、六百キロにもなる大きな樽みこしに、松明百本ほどをつけて練り歩く「火炎みこし」で有名な壮大なまつりです。
三嶽寺でお祓いを受けたみこしは、寺からロープウェイ乗り場までを約一時間かけております。
まつりで使う松明や篝の準備は、地元の「僧兵まつり保存会」が行い、松明には油分を多く含んだ松のジン(芯に近い部分)を使っています。
凄まじい炎を巻き上げるたいまつをたてて重さ600キロもの御輿を僧兵装束に身を包んだ男たちが担ぎ、湯の山温泉街約2キロを練り歩く光景は圧巻です。
また花火の打ち上げやステージでのショー、パフォーマンス、夜店屋台等のイベントを多数開催します。
湯の山温泉にある三嶽寺の僧兵たちがスタミナ源として食べていたといわれる鍋、「僧兵鍋」があります。
山の幸や猪などの肉を中心とした具材を、数種類の味噌で煮込んだもので、湯の山温泉の旅館などで提供されています。
湯の山温泉の「僧兵味噌」や「僧兵鍋」には、いくつかのユニークな掟があります。
一、僧兵味噌を使った鍋とすること
一、猪・鹿・鳥の肉を使ったスタミナ鍋とすること
一、山の幸を豪快に盛り込むこと
一、菰野産の野菜をふんだんに使うこと
一、甘酒と僧兵味噌で味加減を調整すること
一、好みで山芋のすりおろしを付けること
一、出汁まで食べていただくようにすること
一、食す前に武家政治に抗った僧兵に思いを馳せること
一、僧兵鍋を食すとき、信長の話はせぬこと
僧兵たちに心を寄せる、ちょっとユニークなものもあります。
湯の山温泉開湯1300年を記念し作られた「僧兵味噌」は湯の山温泉のお土産として販売されています。